モーツァルト(1756-1791)
歌劇「フィガロの結婚」ハイライツ
伯爵夫人: キリ・テ・カナワ
スザンナ: ルチア・ポップ
ケルビーノ: フレデリカ・フォン・シュターデ
フィガロ: サミュエル・ラメイ
アルマヴィーヴァ伯爵: トーマス・アレン
バルトロ: クルト・モル
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮: サー・ゲオルグ・ショルティ
録音: 1981年
(62:38)
今夜はモーツァルトの「フィガロの結婚」です。
これまで聞いてきた同曲の最高水準の一つこそ、今夜聞いたショルティ指揮によるものと思います。デイム・キリとサー・トーマスによる伯爵夫人と伯爵、ポップのスザンナ、フリッカのケルビーノ、ラメイのフィガロと配役は豪華を極めています。
さらに、全く他を寄せつけない歌唱を聞かせるのは、モルのバルトロでしょう。このバス歌手特有の深みだけではなく、いかにモルが正確に軽みをもって早口で歌えるかを証明した録音でもあります。
また、ショルティというと先鋭な指揮ぶりがトレードマークのようになっていますが、ロンドン・フィルと組んだものは、淡いロマンティシズムが漂う柔和さが特徴となっていると思います。
この演奏は全曲盤を聞いてこそ魅力を満喫できるのですが、なぜか抜粋盤となると、あまり感銘を受けません。如何に全体としての見通しが良く、前後関係のツボが押さえられた演奏ということかもしれません。(これと同様のケースに、マッケラスの「コシ・ファン・トゥッテ」があります。)
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モーツァルト(1756-1791)
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」ハイライツ
ドン・ジョヴァンニ: バリエル・バキエ
ドンナ・アンナ: ジョアン・サザーランド
ドンナ・エルヴィーラ: P. ローレンガー
ドン・オッターヴィオ: ヴェルナー・クレン
レポレッロ: ドナルド・グラム
ツェルリーナ: マリリン・ホーン
マゼット: レオナルド・モンレアーレ
騎士長: クリフォード・グラント
アンブロジアン・シンガーズ
イギリス室内管弦楽団
指揮: リチャード・ボニング
録音: 1968年
(74:41)
今夜はモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」です。
「ドン・ジョヴァンニ」もブログでは3回目の登場となりますが、この演奏はいくぶん異色なものと言えるかもしれません。たとえば、ツェルリーナにマリリン・ホーンを擁するなど、偉大な歌手の饗宴を愉しむといった趣です。
アリアに所々に装飾音を施すなど、モーツァルトという素材を用いた一種のベルカント・オペラとなっていますが、それでも充分に愉しめるのは、やはり歌手陣のすばらしさに因るところが大きいのでしょう。殊に第1幕のフィナーレのアンサンブルなどは聞きものです。
なお、チェンバロによる即興の通奏低音は、劇的効果を高めるのではなく、長閑さを醸し出しています。序曲では間が抜けている感も無きにしも非ずですが(汗)。(第2幕のドン・ジョヴァンニによるアリアの伴奏となるマンドリンも不思議な音です(汗)。)
ところで、「ドン・ジョヴァンニ」の場合、ドラマの流れを損なわずに名場面をCD一枚に収めるのは難しいですね。"このハイライツ盤ではこれが入っているけれど、こちらでは入っていない"といったことがありますから。
それでも、CD3枚分の全曲を腰をすえて聞くとなると、時間の問題もさることながら、なかなかその気力も湧いてこないのは、この蒸し暑さゆえのことでしょうか。
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2009/Aug
23
Sunday
19:00
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モーツァルト(1756-1791)
歌劇「後宮からの誘拐」KV384 全曲
コンスタンツェ: ロイス・マーシャル
ブロンデ: イルゼ・ホルヴェーク
ベルモンテ: レオポルド・シモノー
ペドリッロ: ゲルハルト・ウンガー
オスミン: ゴットロープ・フリック
パシャ・セリム: H. ラウラベンタール
ビーチャム・コーラル・ソサエティ
ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
指揮: サー・トーマス・ビーチャム
録音: 1956年
(77:10/37:02)
今夜はモーツァルトの「後宮からの誘拐」です。
このオペラは1782年の作ですから、モーツァルト26歳、コンスタンツェ・ヴェーバーと結婚した年となります。なお、有名な話ではありますが、コンスタンツェはかのカルロ・マリア・フォン・ヴェーバーの従姉にあたります。このオペラのヒロインがコンスタンツェという名なのは偶然なのでしょうか?(^-^)
オペラ以外のジャンルですと、「後宮」が作曲された1782年には、交響曲第35番「ハフナー」、弦楽四重奏曲第14番「春」といった名作が生み出されています。「ハフナー」は後期6大交響曲の幕を開けるものであり、「春」は所謂「ハイドン・セット」の冒頭を飾る作品です。
弦楽四重奏曲では中期の力作、交響曲では後期の幕を開けた年でしたが、オペラではこの「後宮」によって中期を終えたということになるでしょうか。なお、ピアノ協奏曲はこの時点で第10番までしか書かれておらず、このジャンルはモーツァルト中後期にたて続けに名曲が生み出されることになります。
さて、「魔笛」を例外とすると、モーツァルトの高名なオペラはイタリア語の台詞によるものが多い感がありますが、「後宮」はドイツ語のリブレットに作曲されています。登場人物は語り役の太守セリムを含んでも6人と「コシ・ファン・トゥッテ」と同じく絞り込まれています。
それゆえでしょうか、録音でも脇役にいたるまで名歌手が起用されていることが嬉しい限りです。このビーチャム盤では、ヒロインのメイドにホルヴェーク、ヒロインの恋人役ベルモンテの召使ペドリッロにウンガーという豪華さ。そして、悪役の代名詞のようなオスミンにはフリック!
もちろん、マーシャルのコンスタンツェとベルモンテのシモノーも品のある美声を聞かせてくれます。1956年のステレオ録音ということもあり、さすがに古めかしいことは否めませんが、充分に「後宮」を聞く愉しさを満喫できました。
なお、2枚目のディスクには第3幕の後に、シモノーによるオペラ・アリアとコンサート・アリアが全5曲32分にわたって収められています。これまた輪郭がくっきりとした美声を聞かせてくれます。
モーツァルト(1756-1791)
歌劇「魔笛」ハイライツ
ザラストロ: マッティ・サルミネン
タミーノ: ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ
夜の女王: エディタ・グルベローヴァ
パミーナ: バーバラ・ボニー
第1の侍女: パメラ・コバーン
第2の侍女: デロレス・ジーグラー
第3の侍女: マリアナ・リポヴシェク
パパゲーノ: アントン・シャリンガー
パパゲーナ: エディト・シュミット
モノスタトス: ペーター・ケラー
第1の武士: トーマス・モーザー
第2の武士: アンティ・スホーネン
チューリッヒ歌劇場管弦楽団&合唱団
指揮: ニコラウス・アーノンクール
録音: 1987年
(73:58)
今夜はモーツァルトの「魔笛」です。
「魔笛」にはすてきな録音が多く、脇役にいたるまで豪華な歌手陣を擁することがあり驚かされることがよくあります。このアーノンクール盤もその例外ではありません。このハイライツ盤には登場がありませんが、弁者はなんと、トーマス・ハンプソン!
この「魔笛」の豪華な歌手陣は、かつて聞いた「ドン・ジョヴァンニ」と似通っていますね。
深夜便2 モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ」 アーノンクール
あの「ドン・ジョヴァンニ」での騎士長が、ここでザラストロを歌うサルミネンであったならなと思ってしまうのは不謹慎でしょうか(≧∇≦)
アーノンクールはこの「魔笛」(1987年)を皮切りに、
「ドン・ジョヴァンニ」(1988年)、
「コシ・ファン・トゥッテ」(1991年)、そして
「フィガロの結婚」(1993年)とダ・ポンテ三部作を収録しています。
オーケストラと合唱のみ「魔笛」ではチューリッヒ歌劇場となっていますが、アーノンクールらしい攻撃性が時として顔を覗かせます。それゆえに、夜の女王のアリアなどは、グルベローヴァの名歌唱もあってゾクゾクさせられます。
サルミネンとグルベローヴァ以外も、ブロホヴィッツ、ボニーの美声は流麗ですし、シャリンガーの誠実な歌唱も好感大です。「魔笛」のハイライツ盤としては、
ハイティンク盤とともに大のお気に入りです(^-^)
なお、アーノンクールはこの録音からちょうど20年後にあたる2007年にふたたびチューリッヒ歌劇場と「魔笛」を映像収録しているそうですが、それは未聴です。
モーツァルト(1756-1791)
歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」全曲
フィオルディリージ: リーザ・デラ・カーザ
ドラベラ: クリスタ・ルートヴィヒ
デスピーナ: エミー・ローゼ
グリエルモ: エーリッヒ・クンツ
フェランド: アントン・デルモータ
ドン・アンフォルソ: パウル・シェッフラー
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
指揮: カール・ベーム
録音: 1955年
(74:53/71:49)
今夜はモーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」です。
R. シュトラウスはモーツァルト・スタイルを求めて「ばらの騎士」を書きましたが、そのストーリーは「フィガロの結婚」に似通っていることは有名でしょう。前回の流れからすれば、「フィガロの結婚」ですが、これは先日聞いたばかりですので、今夜は「コシ・ファン・トゥッテ」を選びました(^-^)
モーツァルト=ダ・ポンテ三部作では、「フィガロ」と「ドン」の舞台がスペインのアンダルシア州セビリャ、「コシ」はイタリアのカンパニア州ナポリとなっています。セビリャもナポリも、陽光が燦々とふりそそぐ土地というイメージがありますが、「コシ」の音楽はそれに相応しいと思います。
「鬼のパンツ」 「フニクラ・フニクラ」で有名なヴェスヴィオ火山を眼前に臨むナポリに対する(私の勝手な)イメージを髣髴とさせる「コシ」となるとなかなか見出すことができません。マッケラスの全曲録音がそれに最も相応しいと思いますが、今夜はベームの全曲盤としました。
これはひたすらウィーン的な演奏と思えます。声高になることなく、美声で語るように歌われるスタイルは、これまた魅力的です。重唱での声の溶け具合も玄妙です。ただし、のんびりとした雰囲気が全体を覆っていますので、そこが好悪を分けるかもしれません。
なお、ベームは「コシ」をたいへん愛好していたそうですが、いくつかカットを施しています。ナンバーにすると、第7曲、第24曲、第27&28曲となります。
2009/Jun
14
Sunday
22:00
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モーツァルト(1756-1791)
歌劇「フィガロの結婚」ハイライツ
フィガロ: アラステア・マイルズ
スザンナ: ヌッチア・フォチーレ
アルマヴィーヴァ伯爵: A. コルベッリ
伯爵夫人: キャロル・ヴァネス
ケルビーノ: スザンナ・メンツァー
バルバリーナ: レベッカ・エヴァンス
バルトロ/アントニオ: アルフォンソ・アントニオッツィ
マルツェリーナ: スザンヌ・マーフィー
ドン・バジリオ/ドン・クルツィオ: ライランド・デイヴィス
スコットランド室内管弦楽団&合唱団
指揮: サー・チャールズ・マッケラス
録音: 1994年
(77:19)
今夜はモーツァルトの「フィガロの結婚」です。
今週は重い作品が続きましたので、モーツァルトで風通しをよくしましょう(≧∇≦)
「フィガロの結婚」との出会いは抜粋盤でしたが、部分的には楽しめても、なかなか親近感は湧いてきませんでした。その後、全曲を聞く機会があり、微妙な心情のひだをいかにモーツァルトが絶妙の音楽をつけているかを知りました。
ストーリーも入り組んでいますが、やはりこれはハイライツを聞くよりも全曲を聞いたほうが理解しやすいでしょうね。私はこれ以降、「オペラは全曲を聞くべき」という思いに縛られる(??)ことになります。
しかし、学生時代ならまだしも、社会人となってしまうと、なかなか時間がとれないこともあり、ふたたび抜粋盤にお世話になるようになりました(´▽`) いったんストーリーが呑み込むことができれば、どの場面かもよく分かりますから。
今夜聞いたマッケラス盤は、過日聞いた「ドン」との2枚組CDの1枚です。これで1,000円未満でしたから、お買い得でした(^-^)
深夜便31 モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ」 マッケラス
モーツァルト(1756-1791)
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」ハイライツ
ドン・ジョヴァンニ: ボイエ・スコウフス
レポレッロ: アレッサンドロ・コルベッリ
ドンナ・アンナ: クリスティーネ・ブリューワー
ドン・オッターヴィオ: ジェリー・ハードリー
ドンナ・エルヴィーラ: フェリシティ・ロット
ツェルリーナ: ヌッチア・フォチーレ
騎士長/マゼット: ウンベルト・チウンモ
スコットランド室内管弦楽団&合唱団
合唱指揮: ティモシー・ビラム=ウィグフィールド
コンサルタント: ジョン・フィッシャー
指揮: サー・チャールズ・マッケラス
録音: 1995年
(77:16)
今夜はモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」です。
もう15年ほど前のことになりますが、友人に薦められて購入したマッケラスの「コシ・ファン・トゥッテ」にいたく感激しました。アンサンブル・オペラとしての「コシ」の魅力が、晴朗な陽光のもとに展開されるような趣がありました。この録音は今もって、同曲の屈指のお気に入りの録音です。
しかしながら、マッケラスとスコットランド室内管は、「魔笛」とダ・ポンテ三部作をすべてTELARCレーベルに録音いるものの、「コシ」以外は手をつけていませんでした。件の友人が、「他の録音は『コシ』ほど成功していないよ」と言っていたからです(汗)。フル・プライスのセットは高価でしたし…。
今年になって、「ドン・ジョヴァンニ」と「フィガロの結婚」のハイライツが2枚のディスクに収まった輸入盤を見つけました。2枚組で1,000円未満の廉価盤でしたから、飛びつくように購入(≧∇≦)
はじけるようなリズム感、活き活きとした晴朗な歌唱は、まさしく「コシ」と同じ路線です。「コシ」での6人の歌手のうち、4人がこの「ドン」でも聞くことでき、重唱での息の合った掛け合いも見事です。純粋にモーツァルトの飛翔するような音楽を愉しむことができるでしょう。
ただし、ブリューワーによるドンナ・アンナの声質はこのアンサンブルに合わないような気もしました。興味深いところでは、マゼットと騎士長が同じ歌手によって歌われていることです。これは、この二役に何らかの共通するものを見出した裏読みというわけではないでしょう。チウンモの歌唱は、言われなければ気づかないほど、歌い方が異なりますから。
「ドン・ジョヴァンニ」に喜劇と悲劇の絶妙な融合を聞くならば、以前に記したアーノンクール盤でしょう。
深夜便2 モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ」 アーノンクール
それでもなお、このマッケラス盤の晴朗な魅力も、春のうららかな日に鑑賞するに気持ちいいものです(^-^)
モーツァルト(1756-1791)
歌劇「魔笛」ハイライツ
パミーナ: ルチア・ポップ
タミーノ: ジークフリート・イェルザレム
パパゲーノ: ヴォルフガング・ブレンデル
パパゲーナ: ブリギッテ・リンダー
夜の女王: エディタ・グルベローヴァ
ザラスト: ローランド・ブラハト
モノスタトス: ハインツ・ツェドニック
3人の童子: テルツ少年合唱団員
バイエルン放送交響楽団&合唱団
指揮: ベルナルト・ハイティンク
録音: 1981年
(58:47)
今夜はモーツァルトの「魔笛」です。
「魔笛」は「フィデリオ」とならんで、最も豪華な歌手陣を擁した録音に恵まれていると思います。ただし、両者ともにあまりに豪華すぎて、少なくとも1つの役が弱くなることも共通している気がします。
また、「魔笛」の場合には、脇役に至るまで名歌手が担っていることが多く、驚かされることがあります。今夜はハイライツ盤での鑑賞ですので出番はありませんが、このハイティンク盤では、たとえば武士の一人がペーター・ホフマンであったと記憶しています。
この録音から四半世紀以上が経っていることに驚かされますが、今は亡きポップの可憐にして細やかな情感が織り込まれたパミーナ、若き日の端整なイェルザレム、そしてグルベローヴァのすばらしい夜の女王は比類がありません。
グルベローヴァは後年アーノンクール盤でもっと攻撃的な夜の女王を聞かせてくれますが、私はこの潤いをいくぶん含んだハイティンク盤を愛好しています。私にとって唯一のライヴァルは、若き日のポップ(デビュー盤?)が歌ったクレンペラー盤あるのみです。
60分に満たないハイライツ盤ですが、合唱の夢見心地さも含め、名歌手の共演に存分に浸ることができました。また、ハイティンク&バイエルン放響の真摯な演奏も好感がもてました。
2009/Apr
17
Friday
22:00
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モーツァルト(1756-1791)
歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」ハイライツ
フィオルディリージ: S. マルジオーノ
ドラベルラ: デローレス・ジーグラー
グィレルモ: ジル・カシュマイユ
フェルランド: デオン・ファン・デル・ヴァルト
デスピーナ: アンナ・シュタイガー
ドン・アルフォンソ: トーマス・ハンプソン
オランダ歌劇場合唱団
合唱指揮: ヴィンフリート・マチェウスキ
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
指揮: ニコラウス・アーノンクール
録音: 1991年
(73:59)
今夜はモーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」です。
2月からモーツァルト=ダ・ポンテ3部作をハイライツ録音で聞いてきましたが、今夜はこれまでの流れからアーノンクール&コンセルトヘボウの録音を選びました。
「コシ」は「ドン」とならんでモーツァルトのオペラの中でも最も頻繁に聞く曲ですが、かつてはほとんど全曲を通して鑑賞することがほとんどでした。
たとえば「フィガロ」は前半が動、後半が静と大雑把に捉えることが感覚的に可能と思いますが、「コシ」は動と静の対比が絶えずあり、ストーリー展開のスピードに落差があるため、CD1枚にハイライツとして収めるには無理が生じてしまうことが多いからでしょう。
このアーノンクールのハイライツ盤は、その塩梅が巧みと思えます。しかしながら、歌手陣の豪華さは「ドン」や「フィガロ」には及ばないかもしれません。ことに女声陣にそれが顕著ですが、アーノンクールの時として粘る表現も含めて、全体的に暗めの色調となっていると思います。
「コシ」をジョークとして生き生きとしたドラマとするか、人間的なサガを描いて深遠さを追求するか、このオペラは二つの側面を持っていると思いますが、アーノンクールは後者を採っているようです。私は「どちらかが正しい」とする論調にはついていけませんが、そのどちらを以ってしても「コシ」は名曲と思います。