モーツァルト(1756-1791)
歌劇「後宮からの誘拐」KV384 全曲
コンスタンツェ: ロイス・マーシャル
ブロンデ: イルゼ・ホルヴェーク
ベルモンテ: レオポルド・シモノー
ペドリッロ: ゲルハルト・ウンガー
オスミン: ゴットロープ・フリック
パシャ・セリム: H. ラウラベンタール
ビーチャム・コーラル・ソサエティ
ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
指揮: サー・トーマス・ビーチャム
録音: 1956年
(77:10/37:02)
今夜はモーツァルトの「後宮からの誘拐」です。
このオペラは1782年の作ですから、モーツァルト26歳、コンスタンツェ・ヴェーバーと結婚した年となります。なお、有名な話ではありますが、コンスタンツェはかのカルロ・マリア・フォン・ヴェーバーの従姉にあたります。このオペラのヒロインがコンスタンツェという名なのは偶然なのでしょうか?(^-^)
オペラ以外のジャンルですと、「後宮」が作曲された1782年には、交響曲第35番「ハフナー」、弦楽四重奏曲第14番「春」といった名作が生み出されています。「ハフナー」は後期6大交響曲の幕を開けるものであり、「春」は所謂「ハイドン・セット」の冒頭を飾る作品です。
弦楽四重奏曲では中期の力作、交響曲では後期の幕を開けた年でしたが、オペラではこの「後宮」によって中期を終えたということになるでしょうか。なお、ピアノ協奏曲はこの時点で第10番までしか書かれておらず、このジャンルはモーツァルト中後期にたて続けに名曲が生み出されることになります。
さて、「魔笛」を例外とすると、モーツァルトの高名なオペラはイタリア語の台詞によるものが多い感がありますが、「後宮」はドイツ語のリブレットに作曲されています。登場人物は語り役の太守セリムを含んでも6人と「コシ・ファン・トゥッテ」と同じく絞り込まれています。
それゆえでしょうか、録音でも脇役にいたるまで名歌手が起用されていることが嬉しい限りです。このビーチャム盤では、ヒロインのメイドにホルヴェーク、ヒロインの恋人役ベルモンテの召使ペドリッロにウンガーという豪華さ。そして、悪役の代名詞のようなオスミンにはフリック!
もちろん、マーシャルのコンスタンツェとベルモンテのシモノーも品のある美声を聞かせてくれます。1956年のステレオ録音ということもあり、さすがに古めかしいことは否めませんが、充分に「後宮」を聞く愉しさを満喫できました。
なお、2枚目のディスクには第3幕の後に、シモノーによるオペラ・アリアとコンサート・アリアが全5曲32分にわたって収められています。これまた輪郭がくっきりとした美声を聞かせてくれます。
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