ビゼー(1838-1875)
歌劇「カルメン」ハイライツ
カルメン: アンナ・モッフォ
ドン・ホセ: フランコ・コレッリ
エスカミーリョ: ピエロ・カプッチッリ
ミカエラ: ヘレン・ドナート
フラスキータ: アーリーン・オジェー
メルセデス: ジャーヌ・ベルビエ
ダンカイロ: ジャン・クリストフ・ベノワ
レメンダート:カール・エルンスト・メルカー
スニガ: ホセ・ファン・ダム
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団&合唱団
合唱指揮: ヴァルター・ハーゲン・グロール
指揮: ロリン・マゼール
録音: 1970年
(58:37)
今夜はビゼーの「カルメン」です。
私は多くの「カルメン」を聞いているわけではありませんし、この曲は全曲を通して聞くよりも抜粋で聞くほうが多いのですが、このマゼール盤はとびっきりの魅力に溢れています。
モッフォの妖艶な題名役、コレッリの血の気の多いドン・ホセ、カプッチッリの巧みで力強いエスカミーリョ、そしてドナートの可憐なミカエラと主役級のすばらしい歌唱にはただ聞き惚れるのみです。
さらに、スニガといった脇役にダムを擁するといった豪華さもありますが、脇役の華はなんといってもオジェーのフラスキータでしょう。第2幕冒頭の「ジプシーの歌」でモッフォの"ラ・ラ・ラ"に絡むオジェーの美しさとコントラストといったらありません。あまりに古典美的かもしれませんが、その魅力には抗し難いものがあります。
今回はハイライツ盤での鑑賞ですので、もっと他にも聞きたい場面があることは否めませんが、それでもむせかえるような「カルメン」独特の情緒に浸ることができました。
2009/Mar
23
Monday
00:00
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ムソルグスキー(1839-1881)
人民音楽劇「ボリス・ゴドゥノフ」
全曲よりプロローグと第1幕
1872年改訂オリジナル版
ボリス: アレクサンドル・ヴェデルニコフ
ニキーティチ: ヴラディミール・フィリッポフ
ミチューハ: ニコライ・ニヅィエンコ
シチェルカーロフ: アレキサンドル・ヴォロシロ
シュイスキイ: アンドレイ・ソコロフ
ピーメン: ヴラディミール・マトリン
偽グリゴーリイ: ヴァディスラフ・ピアフコ
居酒屋の女主人: リュドミラ・シモノーヴァ
ワルラーム: アルトゥール・エイゼン
ミサイール: アナトーリ・ミシュティン
ソヴィエト連邦TV・ラジオ大合唱団
合唱監督: クラヴディ・プティッツァ
合唱首席指揮: リュドミラ・エルマコーヴァ
スプリング・スタジオ児童合唱団
合唱監督: アレクサンドル・ポノマレフ
ソヴィエト連邦TV・ラジオ大交響楽団
指揮: ヴラディミール・フェドセーエフ
録音: 1978-1983年
(67:23)
今夜はムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」です。
ロシア近代文学の祖とも謳われるアレクサンドル・プーシキンの作品はオペラ化されたものが多いようですが、その中でも最も高名なものがチャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」とムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」となるでしょう。
モスクワ大公ボリス・フョードロヴィチ・ゴドゥノフ(1551-1605)が戴冠してから没するまでを描いたこのオペラは、史実に脚色しているとすれば、オペラではフョードル1世の帝位承継者であるグレゴーリイを殺害したのがボリスであるということです。
このオペラは、"心理劇"ともいえる魅力がありますが、壮麗な歴史オペラとすることも可能でしょう。ことにリムスキー-コルサコフ版は後者の趣が強いと思いますが、今夜はムソルグスキーの原典版による演奏です。
それぞれの歌手の個性は薄いかもしれませんが、それがかえってモノトーンの"心理劇"としての側面が浮き彫りになっているように思えました。その中で、児童合唱を含め、合唱団の美しさは比類がありません。オーケストラは歌手陣と拮抗するような指向性ではなく、丁寧に歌手陣と一体化しています。
プロローグと全4幕からなる長大なオペラですので、時間的な制限から、今夜は3枚のディスクの中からプロローグと第1幕までを聞きましたが、これだけでもこの作品のすばらしさを充分に堪能することができました。なお、今日はムソルグスキー生誕170年にあたります。
2009/Mar
21
Saturday
00:00
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ワーグナー(1813-1883)
「ニーベルングの指環」より
楽劇「ワルキューレ」第1幕第3場
ジークムント: ラウリッツ・メルヒオール
ジークリンデ: ヘレン・トローベル
NBC交響楽団
指揮: アルトゥール・トスカニーニ
録音: 1941年
(26:25)
今夜はワーグナーの「ワルキューレ」です。
「ニーベルングの指環」にあって最も親しみやすい作品は「ワルキューレ」でしょう。その第1幕は劇的なものと浪漫的なものといった"オペラの華"が盛りだくさんです。
また、登場人物が3人ということもあって、ワーグナーによる舞台作品では最も単独で演奏される機会が多いと思います。全曲からの抜粋ということではなく、これだけで録音されたものもいくつかありますね。
今夜はその第1幕から最終場をラジオ放送用ライブとして収録されたトスカニーニの録音を聞きました。最終場ではフンディングが登場しませんので、ジークムントとジークリンデの二重唱とオーケストラの雄弁さにひたすら酔うことになります。
往年のヘルデン・テノールであるメルヒオール、ホッホ・ドラマティッシャー・ソプラノとしてメトロポリタン歌劇場の華であったトローベル、そしてジークフリート・ワーグナーの盟友トスカニーニ、そしてその手兵NBC交響楽団ががっぷりと四つに組んだ名演は、思わず手に汗を握ってしまいます。
今夜は時間的な制約から短めのオペラを選んだつもりでしたが、この"背徳の美"と"悲劇と崩壊への突進"に心奪われ、2回も続けて聞いてしまいました。
2009/Mar
19
Thursday
00:00
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ヴェルディ(1813-1901)
歌劇「ラ・トラヴィアータ」ハイライツ
ヴィオレッタ: レナータ・テバルディ
アルフレード・ジェルモン: ジャンニ・ポッジ
ジョルジョ・ジェルモン: アルド・プロッティ
アンニーナ: リナ・カヴァレッリ
フローラ: アンジェラ・ヴェルチェッリ
ガストーネ: ピエロ・デ・パルマ
ドゥフォール男爵: アントニオ・サケッティ
ドビニー侯爵: ダリオ・カセッリ
グランヴィル医師: イヴァン・サルディ
ローマ聖チェチーリア・アカデミー管弦楽団&合唱団
指揮: フランチェスコ・モリナーリ=プラデッリ
録音: 1954年
(62:38)
今夜はヴェルディの「ラ・トラヴィアータ」です。
このオペラは私にとって典型的な"プリマドンナ・オペラ"です。前回の「トスカ」では、題名役だけでなくカヴァラドッシもスカルピアも同等にして重要な役割を担っていると思いますが、「ラ・トラヴィアータ」ではヴィオレッタの魅力に、そのオペラそのものの出来が左右されてしまうでしょう。
ヴェルディやプッチーニといったレパートリーでは、私はレナータ・テバルディに信頼を寄せています。必ずしも最高の配役とはならずとも、平均点が非常に高く、裏切れることなく安心して聞くことできるのです。
ヴィオレッタとしてのテバルディは気丈にして力強すぎ、ことに前半では無理があるような感もありますが、ハイライツ盤であっても、その後半へ向けての悲劇の表出は見事と思います。
オーケストラを含め他の配役も、私にとってヴェルディを愉しむツボである"歌"と"暖かみ"があります。これが本場ものの強みとなるのでしょうか? 繊細な悲劇としての「ラ・トラヴィアータ」ではありませんが、豊かなオペラの世界を充分に堪能しました。
2009/Mar
17
Tuesday
00:00
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プッチーニ(1858-1924)
歌劇「トスカ」全曲
トスカ: ビルギット・ニルソン
カヴァラドッシ: フランコ・コレッリ
スカルピア: D・フィッシャー・ディースカウ
アンジェロッティ: シルヴィオ・マイオニカ
堂守: アルフレード・マリオッティ
スポレッタ: ピエロ・デ・パルマ
シャルローネ: ディノ・マントヴァーニ
看守: リベロ・アルバーチェ
牧童: パトリツィオ・ヴェロネッリ
ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団&合唱団
合唱指揮: ジョルジョ・キルシュナー
指揮: ロリン・マゼール
録音: 1966年
(44:10/67:10)
今夜はプッチーニの「トスカ」です。
合唱を除き、「トスカ」の登場人物は9人ですが、女声は題名役のトスカのみです。しかし、この曲が男声で満たされているという感覚もあまりおきません。トスカに多くの見せ場があるためでしょう。
それでもなお、「トスカ」が"プリマ・ドンナ・オペラ"とも思えないのです。それは、ストーリー展開の鍵を握っているのがスカルピアだからでしょう。
題名役とカヴァラドッシの歌手の力量のバランスとそれぞれの歌唱も重要ですが、スカルピアを誰が歌っているかが気になる理由がここにあります。
ニルソンとコレッリのつり合いの取れたすばらしい歌唱もさることながら、この録音ではディースカウの悪役ぶりが聞きものです。
きわめて暴力的かつ陰惨なオペラですが、音楽的な魅力は抗し難いですし、これほど名歌手の共演に期待をしてしまうプッチーニのオペラも他にないかもしれません。
2009/Mar
15
Sunday
00:00
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ワーグナー(1813-1883)
合唱曲集
「さまよえるオランダ人」
「タンホイザー」
「ローエングリン」
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
「神々の黄昏」
「パルジファル」
マリー: エリザベート・シェルテル
ハーゲン: ヨーゼフ・グラインドル
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
指揮: ヴィルヘルム・ピッツ
録音: 1958年頃
(53:30)
今夜はワーグナーの合唱曲集です。
合唱の扱いが巧みなオペラ作曲家として、ワーグナーは比類がないと思います。合唱を民衆として、その意思の善悪にかかわらず、劇中の人物、そして聴衆の意識を一定の方向に導く手腕に長けているのです。
それでも、ワーグナーの合唱曲集という録音はそれほど多くはないかもしれません。全曲盤からの抜粋ではなく、かつ、ワーグナーだけを集めた録音となると、ごく僅かかもしれません。
このような状況にあって、ヴィルヘルム・ピッツがバイロイト祝祭管弦楽団&合唱団とともに収録したこのCDは貴重なものとなるでしょう。録音年代は記されていませんが、プロダクション年は1958年となっています。
オーケストラの響はこじんまりとしていることが多いのですが、これは録音年代ゆえのことだけでなく、実際に演奏者が少ないのかもしれません。合唱も決して大人数とは聞こえません。
それでも、隅々まで行き渡った配慮に、戦後のバイロイトに君臨した合唱指揮者ピッツの辣腕ぶりを垣間見るような気がしてしまいます。
収録時間はわずか50数分にすぎませんが、存分にワーグナーの合唱曲を堪能しました。シェルテルのマリー、グラインドルのハーゲンもこの名録音に花を添えています。
2009/Mar
13
Friday
21:00
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ワーグナー(1813-1883)
楽劇「トリスタンとイゾルデ」ハイライツ
トリスタン: ヴォルフガング・ヴィントガッセン
イゾルデ: ビルギット・ニルソン
クルヴェナール: エーベルハルト・ヴェヒター
ブランゲーネ: クリスタ・ルートヴィヒ
若い水夫: ペーター・シュライアー
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
合唱指揮: ヴィルヘルム・ピッツ
指揮: カール・ベーム
録音: 1966年
(76:56)
今夜はワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」です。
ワーグナー畢生の大作となれば、4つの作品から成る「ニーベルングの指環」でしょう。しかし、1つの作品と限定すれば、「トリスタンとイゾルデ」こそワーグナーの最高傑作となるのではないでしょうか。
そう思う理由は、私がこの曲が好きだから(≧∇≦)
ベーム&バイロイトによるライブ録音は熱気に溢れ、集中力と凝集力にことに秀でた名演です。ヴィントガッセン、ニルソン、ヴェヒター、ルートヴィヒ、シュライアーと歌手陣に隙はまったくありません。
このハイライツ盤は、1枚のCDで往年の名歌手達のすばらしい歌唱に浸ることができます。ストーリーを追う抜粋となっていないことが残念ですが、安価な廉価盤でこれだけ「トリスタン」を堪能できるのですから、贅沢な注文でしょう。
2009/Mar
11
Wednesday
00:00
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モーツァルト(1756-1791)
歌劇「フィガロの結婚」ハイライツ
アルマヴィーヴァ伯爵: トーマス・ハンプソン
伯爵夫人: シャルロッテ・マチェウスキー
スザンナ: バーバラ・ボニー
フィガロ: アントン・シャリンガー
ケルビーノ: ペトラ・ラング
マルチェリーナ: アン・マレイ
バルトロ: クルト・モル
バジリオ: フィリップ・ラングリッジ
バルバリーナ: イザベル・レイ
アントニオ: ケヴィン・ランガン
2人の女中: リリアーナ・カステロ、ペトラ・ラング
オランダ歌劇場合唱団
合唱指揮: ヴィンフリート・マチェウスキ
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
指揮: ニコラウス・アーノンクール
録音: 1993年
(76:20)
今夜はモーツァルトの「フィガロの結婚」です。
かつては「このオペラはレシタティーヴォを含む全曲を聞いてこそ、その素晴らしさが分かる」と思っていました。ところが、ここ数年はすっかりハイライツを聞くことがほとんどなっています。
時間的な制約があることもありますが、多くの登場人物の複雑な心理劇をCD3枚にわたって愉しむには、私も少し歳をとりすぎたのかもしれません(≧∇≦)
「ドン・ジョヴァンニ」に続いて、「フィガロの結婚」もアーノンクールの抜粋盤を選びました。前者は同曲の屈指の名演であり直球型の演奏でしたが、後者は変化球の多用に驚いたものです。
しかしながら、この抜粋盤では、変化球であることに気づきにくく、ハイライツとして愉しむには素敵なディスクです。
「ドン」で名歌唱を聞かせてくれた歌手陣も「フィガロ」で登場しており親しみが湧きますが、ここではバルトロでのモルの参加が嬉しい限りです。
抜粋盤ですので、第1幕の"Cosi fan tutte le belle"の台詞がないことが残念ですが、それでも1時間15分以上も安価な廉価盤で「フィガロの結婚」を堪能できることは幸せです。
2009/Mar
08
Sunday
00:00
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ヴェルディ(1813-1901)
歌劇「ファルスタッフ」ハイライツ
ファルスタッフ: ドメニコ・トリマルキ
フォード: ロベルト・セルヴィール
フェントン: マウリツィオ・コメンチーニ
カイウス: エンリーコ・ファチーニ
バルドルフォ: アレッサンドロ・コゼンティーノ
ピストーラ: フランコ・デ・グランディス
アリーチェ: ジュリア・フォークナー
ナンネッタ: ディルベール
クイックリー夫人: アンナ・マリア・ディ・ミッコ
メグ・メージ夫人: アンナ・ボニタティブス
ハンガリー国立歌劇場管弦楽団&合唱団
合唱指揮: アニコー・カトナ
指揮: ヴィル・フンブルグ
録音: 1996年
(71:44)
今夜はヴェルディの「ファルスタッフ」です。
にほんブログ村にモーツァルト、ワーグナー、プッチーニ、R.シュトラウスといった偉大なオペラ作曲家のコミュニティは既にありましたが、なぜかヴェルディはありませんでした。そこで、数日前に自分自身で作ってしまいました(≧∇≦)
「アイーダ」と「レクイエム」を完成した後のヴェルディは、その後しばらく大作から遠ざかっていましたが、1886年に「オテロ」を完成し、穏やかな老後の生活を愉しもうとしていたようです。ところが、1892年に「ファルスタッフ」を脱稿、翌年ヴェルディ80歳の年に初演されています。
ヴェルディの最後のオペラが、このようなウイットに富んだものとなったことはとても興味深いですね。また、これがたんなる"お笑い"オペラではなく、人間の深層心理を描いたものとしての大傑作ということはいたるところで語られているようです。
「脇役が存在するのだろうか?」と思えるほど、どの役も全体の中で重要なポジションを担っており、"アンサンブル・オペラ"と形容したくなります。「コシ・ファン・トゥッテ」や「ニュルンベルクのマイスタージンガー」などもそのような例に入るでしょう。
しかし、「ファルスタッフ」の場合、「コシ」や「マイスタージンガー」と決定的に異なることが、たとえ一部の歌手が突出しようとしても、ヴェルディの筆致によって"アンサンブル"の一部となってしまうことにあると思えます。
今夜は全曲ではなく、ハイライツ盤での鑑賞でしたが、それでも充分「ファルスタッフ」を堪能しました。抜粋の場面選択は少ししっくりきませんでしたが…。
2009/Mar
06
Friday
22:00
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