スメタナ(1824-1884)
歌劇「売られた花嫁」ハイライツ(英語版)
序曲
プロ・アルテ管弦楽団
指揮: サー・チャールズ・マッケラス
録音: 1958年
クルシナ: ブライアン・ドレイク
ルドミラ: アン・ロブソン
マジェンカ: エヴァ・ジューン
トビアス・ミーシャ: エリック・スタンナード
ハータ: シェリア・レックス
ヴァシェク: ケヴィン・ミラー
イェニーク: ドナルド・スミス
ケツァール: ジョン・ホームズ
サドラーズ・ウェールズ歌劇場管弦楽団&合唱団
指揮: ジェイムス・ロックハート
録音: 1962年
(51:55)
今夜はスメタナの「売られた花嫁」です。
この作品はオペラ・ブッファの傑作の一つと思っているのですが、管弦楽曲ばかり有名となっている感があります。オペラとしての演奏ということを考慮すると、歌手にとっても指揮者にしても原語というハードルが生じてしまうのでしょうか。
しかしながら、「売られた花嫁」がドヴォルザークなど他のチェコの作曲家よりも恵まれていることは、ドイツ語と英語による演奏にも録音がいくつかあることでしょう。
今夜はそのような中から英語版によるハイライツ盤を聞きました。このオペラが時として見せるひなびた悲哀は垣間見えないものの、丁寧な歌唱だけで平板になることになく充分に愉しむことができました。
なお、このCDでは序曲のみ演奏が異なりますが、録音年代がそれほど変わらないだけでなく、演奏志向性も似通っているのでしょうか、まったく違和感がありません。
今日はスメタナの命日、没後125年になります。
2009/May
12
Tuesday
21:00
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グノー(1818-1893)
歌劇「ファウスト」ハイライツ
ファウスト: ニコライ・ゲッダ
マルグリート: V. デ・ロス・アンヘレス
メフィストフェレス: ボリス・クリストフ
ヴァランティン: エルンスト・ブランク
ジーベル: リリアーヌ・ベルトン
マルト: リタ・ゴール
ワーグナー: ヴィクトール・オートラン
パリ歌劇場管弦楽団&合唱団
合唱指揮: ルネ・デュクロ
指揮: アンドレ・クリュイタンス
録音: 1958年
(75:25)
今夜はグノーの「ファウスト」です。
ゲーテの「ファウスト」第1部に基づいて作曲されたオペラですが、聖書を例外とすれば、ゲーテのこの作品ほど作曲家が題材として用いた文学作品も他にないかもしれません。
オペラではボイートの「メフィストーフェレ」があり、それ以外のジャンルとなるとシューベルト、ベルリオーズ、シューマン、リスト、ワーグナー、マーラーがいますね。
ボイートの作品は「プロローグ」を知るのみですが、他の作曲家の「ファウスト」にあって最も規模が大きい作品こそ全5幕におよぶグノーのオペラでしょう。
3人の主役はバランスが取れた聞かせどころがありますし、合唱やオルガンの効果も大きいと思います。このハイライツ盤には含まれていませんが、このオペラのバレエ音楽も有名ですね。
ゲッダ、ロス・アンヘレス、そしてクリストフを擁したクリュイタンスの録音は、半世紀以上前の収録でありながら、その音質の不満さえ些細なことと思えるほどすばらしい演奏を聞かせてくれます。
なお、今回はタイトルに録音年を記しましたが、それは、この録音のわずか5年前に指揮者&オーケストラ(合唱指揮者&合唱団)を含む主役3人が同じEMIにこのオペラを録音しているからです。
旧盤もモノラル録音ながらこれまたすばらしい演奏ですが、ステレオという技術が生み出されたことによって再録音したかったのでしょうね。
ワーグナー(1813-1883)
楽劇「ニーベルングの指環」ハイライツ
「ラインの黄金」
フロー: ドナルド・グローベ
ヴォータン: D.フィッシャー=ディースカウ
フリッカ: ジョセフィン・ヴィージー
ローゲ: ゲルハルト・シュトルツェ
ヴォークリンデ: ヘレン・ドナート
ヴェルグンデ: エッダ・モーザー
フロースヒルデ: アンナ・レイノルズ
「ワルキューレ」
ジークムント: ジョン・ヴィッカース
ヴォータン: トマス・ステュワート
「ジークフリート」
ジークフリート: ジェス・トーマス
ミーメ: ゲルハルト・シュトルツェ
ブリュンヒルデ: ヘルガ・デルニッシュ
「神々の黄昏」
ジークフリート: ヘルゲ・ブリリオート
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮: ヘルベルト・フォン・カラヤン
録音: 1966-1970年
(70:20)
今夜はワーグナーの「ニーベルングの指環」です。
"序夜と3日間の舞台祝祭劇"と冠する「指環」ですが、今夜はCD1枚にハイライトを収めたカラヤン盤を聞きました。きわめて抒情的な演奏ですが、それに合わせてか歌手陣もリリカルなタイプを選出していると思います。
ステュワートのヴォータン、トーマスのジークフリートにそれが顕著ですが、脇役ながらヴォークリンデにドナートを起用していることが端的にそれを物語っているかもしれません。シュトルツェのローゲとヴィッカースのジークムントは例外となるでしょうけれども。
オーケストラは流麗ですが、鋭さと力強さもカラヤン&ベルリンフィルらしく、"ジークフリートの死と葬送"の壮絶な音響がもたらすドラマにはただただ圧倒されるだけです。
「指環」のハイライトをCD1枚に収めたものとなると、ある意味で割り切って考えることが必要と思いますが、それでも、カラヤンのワーグナーを聞くという充足感は得られました。
モーツァルト(1756-1791)
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」ハイライツ
ドン・ジョヴァンニ: ボイエ・スコウフス
レポレッロ: アレッサンドロ・コルベッリ
ドンナ・アンナ: クリスティーネ・ブリューワー
ドン・オッターヴィオ: ジェリー・ハードリー
ドンナ・エルヴィーラ: フェリシティ・ロット
ツェルリーナ: ヌッチア・フォチーレ
騎士長/マゼット: ウンベルト・チウンモ
スコットランド室内管弦楽団&合唱団
合唱指揮: ティモシー・ビラム=ウィグフィールド
コンサルタント: ジョン・フィッシャー
指揮: サー・チャールズ・マッケラス
録音: 1995年
(77:16)
今夜はモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」です。
もう15年ほど前のことになりますが、友人に薦められて購入したマッケラスの「コシ・ファン・トゥッテ」にいたく感激しました。アンサンブル・オペラとしての「コシ」の魅力が、晴朗な陽光のもとに展開されるような趣がありました。この録音は今もって、同曲の屈指のお気に入りの録音です。
しかしながら、マッケラスとスコットランド室内管は、「魔笛」とダ・ポンテ三部作をすべてTELARCレーベルに録音いるものの、「コシ」以外は手をつけていませんでした。件の友人が、「他の録音は『コシ』ほど成功していないよ」と言っていたからです(汗)。フル・プライスのセットは高価でしたし…。
今年になって、「ドン・ジョヴァンニ」と「フィガロの結婚」のハイライツが2枚のディスクに収まった輸入盤を見つけました。2枚組で1,000円未満の廉価盤でしたから、飛びつくように購入(≧∇≦)
はじけるようなリズム感、活き活きとした晴朗な歌唱は、まさしく「コシ」と同じ路線です。「コシ」での6人の歌手のうち、4人がこの「ドン」でも聞くことでき、重唱での息の合った掛け合いも見事です。純粋にモーツァルトの飛翔するような音楽を愉しむことができるでしょう。
ただし、ブリューワーによるドンナ・アンナの声質はこのアンサンブルに合わないような気もしました。興味深いところでは、マゼットと騎士長が同じ歌手によって歌われていることです。これは、この二役に何らかの共通するものを見出した裏読みというわけではないでしょう。チウンモの歌唱は、言われなければ気づかないほど、歌い方が異なりますから。
「ドン・ジョヴァンニ」に喜劇と悲劇の絶妙な融合を聞くならば、以前に記したアーノンクール盤でしょう。
深夜便2 モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ」 アーノンクール
それでもなお、このマッケラス盤の晴朗な魅力も、春のうららかな日に鑑賞するに気持ちいいものです(^-^)
レハール(1870-1948)
喜歌劇「メリー・ウィドウ」全曲
ミルコ・ツェータ男爵: ブリン・ターフェル
ヴァランシエンヌ: バーバラ・ボニー
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵: B. スコウフス
ハンナ・グラヴァリ: チェリル・ステューダー
カミーユ・ド・ロジヨン: ライナー・トロースト
カスカーダ子爵: カール M. フレドリクソン
ラウール・ド・サン・ブリオシュ: ウーヴェ・ペパー
ニエグシュ: ハインツ・ツェドニック
モンテヴェルディ合唱団
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
指揮: ジョン・エリオット・ガーディナー
録音: 1994年
(79:49)
今夜はレハールの「メリー・ウィドウ」です。
"オペラ深夜便"にてオペレッタは初登場となりますが、オペレッタは「喜歌劇」と訳されるものの、本来はイタリア語で「小さなオペラ」という意味のようです。
オペレッタの起源はそれほど古くはなく、19世紀半ばごろになります。それゆえか、今でもオペラとオペレッタを厳密に区別する向きもあるようです。しかしながら、それは歌劇と楽劇に線を引くようなものと思えます。
線を引きたければそれも良いでしょうし、その必然性があるならば区別すれば良いでしょう。その逆も然り(≧∇≦)
「メリー・ウィドウ」はレハールのオペレッタの中でも最も有名なだけでなく、「こうもり」や「チャールダッシュの女王」などとならんで、オペレッタの代名詞と言えるものかもしれません。洒脱にしてそこはかとなく漂う退廃的な趣が独特の美感を呈していると思います。
この作品ではハンナとダニロの歌唱に焦点が合わされることが多いと感じますが、私はこの曲ではヴァランシエンヌに惹かれます。ここでの同役はバーバラ・ボニー。当時のボニーのコケティッシュな魅力を余すことなく伝えていると思います。
4月30日の今日はレハールの生誕日となりますが、それを祝うに相応しい名演と思いました。
ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「アルジェのイタリア女」全曲
イザベッラ: テレサ・ベルガンサ
リンドーロ: ルイジ・アルヴァ
ムスタファー: フェルナンド・コレナ
タッデオ: ローランド・パネライ
エルヴィーラ: ジュリアーナ・タヴォラッチーニ
ズルマ: ミティ・トゥルッカート・パーチェ
ハーリー: パオロ・モンタルソロ
フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団&合唱団
合唱指揮: アドルフォ・ファンファーニ
パープシーコード: ウンベルト・ヴェドヴェルリ
指揮: シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ
録音: 1963年
(65:09/64:25)
今夜はロッシーニの「アルジェのイタリア女」です。
先週に引き続き同じオペラを聞くことになりましたが、今夜は全曲盤を選びました。ベルガンサ、アルヴァ、コレナ、パネライを擁したヴァルヴィーゾ盤です。
ベルガンサのイザベッラは上品であり、男たちを次々にいなす豪快さは感じにくいのですが、愛らしさがあるためもてる理由がよく分かります(≧∇≦)
コレナもパネライも堂にいった歌いぶりで、魅力たっぷりです。このふたりは「ラ・ボエーム」でも重宝された歌手と思いますが、私の知る限り、録音での共演はありません(パネライはマルチェロ、コレナはショナール、ベノア、アルチンドロ)。
往年の名歌手たちをこうした共演で聞くことができることは幸いです。ヴァルヴィーゾの指揮も堂々としていながら愉しみに満ちています。全体的にはじけるようなリズム感よりも、旋律美に焦点が合わさった演奏と言えるでしょうか。
2009/Apr
28
Tuesday
22:00
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ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「セビリャの理髪師」ハイライツ
ロジーナ: マリリン・ホーン
フィガロ: レオ・ヌッチ
バジリオ: サミュエル・ラメイ
バルトロ: エンツォ・ダーラ
アルマヴィーヴァ: パオロ・バルバチーニ
ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
指揮: リッカルド・シャイー
録音: 1982年
(74:18)
今夜はロッシーニの「セビリャの理髪師」です。
前回鑑賞した「アルジェのイタリア女」から3年後の1816年、ロッシーニのオペラでも最も有名な「セビリャの理髪師」が発表されました。
「アルジェのイタリア女」といい、「セビリャの理髪師」といい、賢い女性(メゾ・ソプラノ)が悪巧みをめぐらす男性の裏をかいてハッピー・エンドという型がありますね。今回もその賢い女性、ロジーナにホーンを起用したシャイー盤を聞きました。
ここでもホーン特有の声質に癖を感じますが、やはりこの稀代のメゾ・ソプラノの歌唱にはただ感服するのみです。その相方のフィガロにヌッチ、バジリオにラメイ、バルトロはダーラと豪華な歌手陣の協演に聞き応え充分でした。
シャイーは、この指揮者にしてはタッチが重い感もあります。立派過ぎるとでも言えばよいでしょうか。しかし、有名な序曲などは堂々として好きです。
ロッシーニのオーケストレイションにかんして言えば、「セビリャの理髪師」といい「アルジェのイタリア女」といいオーボエの扱いが巧いですね!
2009/Apr
26
Sunday
00:00
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ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「アルジェのイタリア女」ハイライツ
太守ムスターファ: サミュエル・ラメイ
エルヴィーラ: キャスリーン・バトル
ズールマ: クララ・フォティ
海賊ハリー: ニコラ・ザッカリア
リンドーロ: エルネスト・パラシオ
イザベッラ: マリリーン・ホーン
タッデオ: ドメニコ・トリマルキ
プラハ・フィルハーモニック合唱団
イ・ソリスティ・ヴェネッティ
指揮: クラウディオ・シモーネ
録音: 1980年
(72:50)
今夜はロッシーニの「アルジェのイタリア女」です。
ベートーヴェンやショパンといった大作曲家から称賛されたロッシーニが再評価されたのは、今からわずか40年ほど前に過ぎないそうです。
生前は時代の寵児とでも言うべきほど人気がありながら、死後しばらく忘れられた存在となったのは、ロッシーニが"時代"に即しすぎていたのかもしれません。
オペラの録音となると、確かに「セビリアの理髪師」を例外とすれば、古い録音があまり無いかもしれません。ロッシーニは37歳で「ウィリアム・テル」を発表すると、それ以降はオペラを作曲することはなく年金生活に入り、美食家としてレストラン経営などしていたことは有名でしょう。
「アルジェのイタリア女」は愉快なストーリーに、歌手の技巧が炸裂するきわめて効果的なシーンに溢れています。その筆頭に挙げられるのは、第1幕フィナーレの7重唱でしょう。これが所謂"ロッシーニ・クレシェンド"というのでしょうね。
ホーンは癖はあるものの、この歌いっぷりには脱帽です。ラメイのムスターファもすばらしいですね。このコミカルなオペラを充分に堪能することができました。
なお、「アルジェのイタリア女」はロッシーニ21歳の1813年に作曲されていますが、これはワーグナーとヴェルディが生まれた年でもあります。そして、ロッシーニが亡くなった1868年(明治元年)は「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が初演された年でもありました。
2009/Apr
23
Thursday
00:00
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プッチーニ(1858-1924)
歌劇「トゥーランドット」ハイライツ
トゥーランドット: エヴァ・マルトン
皇帝アルトゥム: ヴァルデマール・クメント
ティムール: ジョン・ポール・ボガード
カラフ: ホセ・カレーラス
リュー: カティア・リッチャレッリ
ピン: ロバート・カーンズ
パン: ヘルムート・ヴィルトハーバー
ポン: ハインツ・ツェドニック
役人: クルト・リドル
ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
合唱指揮: ヘルムート・フロシャウアー
指揮: ロリン・マゼール
録音: 1983年
(72:17)
今夜はプッチーニの「トゥーランドット」です。
このオペラは作曲家最後の作品であり、プッチーニはこれを完成させることなく、喉頭癌の治療で訪れていたブリュッセルにて手術数日後に心臓発作で急逝しました。
プッチーニは第3幕のリューの自刃までスコアを仕上げていたそうですが、その後は友人のフランコ・アルファーノが補完していることは有名でしょう。
この曲はプッチーニの前衛性がはっきり分かる作品と言えると思います。それまでの「ラ・ボエーム」、「トスカ」、「蝶々夫人」などに顕著なロマンティックな要素に溢れているのですが、それ以上に、所々に顔をのぞかせる曲想の大胆さに驚かされるのです。
プッチーニとシェーンベルクは、お互い尊敬しあっていたそうですが、それが「トゥーランドット」を聞くと、よく分かるような気がします。
しかしながら、偉大な音楽作品ではあるものの、私はどうしてもこのオペラに親近感が湧いてきません。このオペラのドラマにどうしても違和感が拭えないからです。このストーリーのルーツは、「千夜一夜物語」にあるそうですが、プッチーニは原作にはない役を加えました。召使リューです。
いくら身分が違うとはいえ、リューの悲劇とカラフの盲目な恋にはついていけません…orz 大団円がしらけて聞こえてしまうのは私だけでしょうか?!