今夜はリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」です。
ウェーバーの「魔弾の射手」から駆け足でドイツ・オペラの歴史を振り返ってみましたが、19世紀後半から20世紀前半にその伝統的な最後の花を咲かせたのはR. シュトラウスでしょう。
シュトラウスは「サロメ」や「エレクトラ」ではかなり先鋭的な手法をとっており、その素材も新約聖書、ギリシャ悲劇と古典を扱っていました。
ところが、この「エレクトラ」の初演から2年後に発表された「ばらの騎士」では舞台がマリア・テレジア治世下のウィーンとなり、音楽的にも「サロメ」や「エレクトラ」よりもずっと保守的に聞こえます。
しかし、保守的とはいえ、R. シュトラウスらしい濃密で熟しきった音楽に覆われています。「ばらの騎士」によって確立されたR. シュトラウスのオペラ・スタイルは、その後の諸作品に一貫されていると思います。それは、きっと台本作家として組んだホフマンスタールのスタイルによるところも大きいのでしょうね。
R. シュトラウス=ホフマンスタールの世界は、民衆的なドイツの森は舞台となることなく、ウィーンの貴族的な色彩が顕著となりました。
あまりにソフィスティケートされ、時として鬱陶しいまでに官能的なR. シュトラウスのスタイルは、必ずしも私にとっての日常的な音楽鑑賞の守備範囲ではありません。しかし、あらためて聞いてみれば、そのすばらしさには脱帽です。
R. シュトラウス以降、第二次世界大戦前のドイツは不穏なものとなってしまいました。その世相を反映したヒンデミットによる名作もありますが、それはまた何れかの機会に聞いてみようと思います。
ウェーバーの命日から4回連続で聞いてきたドイツ・オペラの歴史はいったんこれでおしまいです。なお、今日6月11日はR. シュトラウスの誕生日にあたります。作曲家としてだけでなく、指揮者としても活躍したR. シュトラウスですが、前回の「ヘンゼルとグレーテル」の初演の指揮も執っていますね。
深夜便46 「ヘンゼルとグレーテル」 アイヒホルン