ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「結婚手形」全曲
トビア・ミル: ブルーノ・プラティコ
ファニー・ミル: アレッサンドラ・ロッシ
エドアルド・ミルフォート: M. コメンチーニ
スルック: ブルーノ・デ・シモーネ
ノートン: フランチェスコ・ファチーニ
クラリーナ: ヴァレリア・バイアーノ
イギリス室内管弦楽団
指揮: マルチェロ・ヴィオッティ
録音: 1990年
(75:52)
今夜はロッシーニの「結婚手形」です。
このオペラは「婚約手形」という訳でも呼ばれますが、数あるロッシーニのオペラの第2作目にあたります。しかし、初演はこの「結婚手形」の方が早いため、"ロッシーニの処女作"と呼ばれることもあるようです。
この初演は1810年ですから、時にロッシーニ18歳。過日聞いた「幸運な間違い」よりも2年前のことになります。
深夜便53 ロッシーニ 「幸運な間違い」 ゼッダ
私はまだロッシーニのすべてのオペラを聞いたわけではありませんが、ロッシーニの大きな飛躍は第10作の「タンクレーディ」と第11作の「アルジェのイタリア女」に顕著であると思っています。ともに1813年の作ですが、それまでの作品も爽やかな魅力を湛えています。
この魅力は、モーツァルトの初期作品を聞く愉しみに似ているかもしれません(^-^)
「結婚手形」の舞台はイギリス。商人(トビア・ミル)が借金のかたに娘(ファニー)を取引先のカナダ人、スルックと結婚させようとします。カナダからやってきたスルックはファニーに一目惚れ。ところが、ファニーにはエドアルドという恋人がいたのです。
スルックはファニーとエドアルドの恋を悟ると、結婚を潔く諦め、トビアから借金の棒引きとして受け取った結婚手形に裏書きをして、若い2人にプレゼントします。トビアは憤慨しますが、スルックは事情を説明して納得させます。みな喜びのうちに幕♪
簡単な説明ではありますが、これを知っておくと、簿記の「手形三者間取引」は容易に理解できるでしょう?? (≧∇≦)ノ彡
ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「ラ・チェネレントラ」全曲
ドン・ラミーロ(王子): ラウル・ギメネス
ダンディーニ(王子の従者): G. クゥイリコ
ドン・マニフィコ(継父): A. コルベッリ
クロリンダ(姉): アデリーナ・スカラベッリ
ティスベ(姉): ラウラ・ポルヴェレッリ
アンジェリーナ: ジェニファー・ラーモア
アリドーロ(哲学者): アラステア・マイルズ
コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
合唱指揮: テリー・エドワーズ
ハープシコード: ジョン・フィッシャー
指揮: カルロ・リッツィ
録音: 1994年
(76:18/78:07)
今夜はロッシーニの「ラ・チェネレントラ」です。
「ラ・チェネレントラ」と聞くとあまり親しみがないかもしれませんが、英語で言えば、「シンデレラ」です(^-^)
私たちにとって一般的に馴染み深いストーリーはグリム童話か、シャルル・ペローによるものでしょう。しかし、ロッシーニの「チェネレントラ」では、継母は継父となっており、ガラスの靴は腕輪、そして魔法使いは哲学者アリドーロ(王子の師)に変わっています。
さらに、ロッシーニのオペラではお馴染みとなっている(?!)変装をともなうストーリーも絡んでいます。王子が従者に、従者が王子に入れ替わって、王子の花嫁探しに出かけ、そこで本物の王子とアンジェリーナ(シンデレラ)が恋に落ちるといった筋書き。
「シンデレラ・ストーリー」という言葉があるくらい、シンデレラとなると、童話の方がよりストレートでロマンティックな内容ですが、こうしてロッシーニのオペラとして聞くならば、このストーリーの改変はとても巧みだと思います。
童話とだいぶ異なる箇所があるため、今回は配役のカッコ内にアンジェリーナからみた関係を記しました。
ところで、指揮者のカルロ・リッツィはこの録音から11年後の2005年にヴェッセリーナ・カサロヴァをタイトル・ロールに擁してこのオペラを再録音していますが、それは残念ながら未聴です。
2009/Jul
08
Wednesday
00:30
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ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「幸運な間違い」全曲
ベルトランド: ケニス・ターヴァー
イザベッラ: コリンナ・モローニ
タラボット: ロレンツォ・レガッツォ
バトーネ: マルコ・ヴィンコ
オルモンド: シモン・ベイリー
ブルノ・チェコ室内ソロイスツ
指揮: アルベルト・ゼッダ
録音: 2005年
(51:19/34:15)
今夜はロッシーニの「幸運な間違い」です。
このオペラは1812年の初演ですから、前回の「タンクレーディ」の前年の作となります。序曲からロッシーニ節が顔をのぞかせていますが、ここではいかにも"若書き"といったイメージが湧いてくるでしょう。"若書き"といっても、それは「未熟」といった意味ではなく、「若々しさに溢れている」といった趣です。
それでも、バロック時代的な優雅さが表立っていますから、「いかにもロッシーニ!」といった感が希薄なことも事実です。それを考えると、翌年に「タンクレーディ」のような傑作を生み出すことになったロッシーニの成長に驚かされるばかりです。
なお、この曲のタイトルは「幸運な間違い」と訳されていますが(英訳は"The Happy Deception")、この「間違い」とは、イザベッラはタラボットの姪であるとして公爵たちを"ごまかし"、悪事を突き止めるといったことに由来していると思われます。公爵がオルモンドに騙されていたことを「幸運な間違い」とするにはひどすぎますから(≧∇≦)
2009/Jun
26
Friday
22:00
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ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「タンクレーディ」全曲
タンクレーディ: エヴァ・ポドゥレス
アメナイーデ: スミ・ジョー
アルジーリオ: スタンフォード・オールセン
オルバッツァーノ: ピエトロ・スパニョーリ
イザウーラ: アンナ・マリア・ディ・ミッコ
ロッジェーロ: ルクレーティア・レンディ
合唱: カペッラ・ブルジェンシス
管弦楽: コレギウム・インストルメンターレ・ブルジェンセ
指揮: アルベルト・ゼッダ
録音: 1994年
(75:20/72:07)
今夜はロッシーニの「タンクレーディ」です。
ロッシーニは生涯に40近いオペラを遺していますが、その創作はわずか20年ほどに限られています。10代後半から始まり、37歳(1829年)の時に作曲した「ウィリアム・テル」が最後のオペラとなりました。76歳で没するまで、美食家としてレストラン経営などをしながら優雅に過ごしたそうです。羨ましいですね(≧∇≦)
「タンクレーディ」は1813年の作で、同じ年にロッシーニによるブッファの傑作「アルジェのイタリア女」も作曲されています。「タンクレーディ」の初演は2月6日ということですので、まだロッシーニは20歳だったことになります。(ロッシーニの誕生日は2月29日。)才能もここまでくると、すごすぎて、羨ましいという気もおきません(^-^)
このオペラは、大きく分けて2種の版に分かれます。初演のヴェネツィア版=ハッピーエンド、そして初演と同年に書き直されたフェラーラ版=ヴォルテールの原作と同じ=悲劇的結末。今夜聞いたゼッダ盤は前者に基づいています。
前世紀から始まった"ロッシーニ・ルネッサンス"の第一人者に相応しいゼッダの重くならず、軽薄ではないドラマの運びはすばらしいと思います。ポドゥレスの題名役を含め、オールセンや他の諸役も隙がありませんが、ここでのビッグネームはなんといってもスミ・ジョーでしょう。プリマ・ドンナ風になることなく、アンサンブルとして聞かせてくれるところは流石です。
今の私には、ロッシーニのブッファならば「アルジェのイタリア女」、セリアならば「タンクレーディ」がお気に入りです。そして、爽やかなハッピーエンド版であることにわだかまりが無ければ、この録音はきわめて上質のものと思います。
ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「セビリャの理髪師」より
歌劇「ウィリアム・テル」序曲
歌劇「チェネレントラ」より
歌劇「アルジェのイタリア女」より
歌劇「泥棒かささぎ」序曲
ヘルマン・プライ
テレサ・ベルガンサ
ルイジ・アルヴァ
フランク・ロパード
ルッジェロ・ライモンディ
アレッサンドロ・コルベッリ
アグネス・バルツァ
ロンドン交響楽団
ヨーロッパ室内管弦楽団
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 他
指揮: クラウディオ・アバド
録音: 1971/1987/1989年
(74:36)
今夜はロッシーニの名曲集、"Rossinissimo!"です。
これは、クラウディオ・アバドが指揮するロッシーニの3つのオペラセットからの抜粋と、ヨーロッパ室内管弦楽団との序曲集から2曲を1枚のCDに収めた抜粋盤です。
コーヒー・ブレイクに"アリア集"を聞くこともすてきですが、このような抜粋盤ですと、独唱だけでなく重唱を聞くことができるため愉しさが増します。
また、プライ、ベルガンサ、ライモンディ、コルベッリ、バルツァを初めとする多くのスターを聞くことができることも嬉しい限りです(^-^)
欲を言えば、ヨーロッパ室内管との2つの序曲は響きがいくぶん硬めに感じられます。アバドがかつてロンドン交響楽団と録音した序曲集ではもっとしなやかさがあったように思えました。それでも、1時間15分近くもロッシーニの軽妙なウィットを充分に愉しみました。
ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「アルジェのイタリア女」全曲
イザベッラ: テレサ・ベルガンサ
リンドーロ: ルイジ・アルヴァ
ムスタファー: フェルナンド・コレナ
タッデオ: ローランド・パネライ
エルヴィーラ: ジュリアーナ・タヴォラッチーニ
ズルマ: ミティ・トゥルッカート・パーチェ
ハーリー: パオロ・モンタルソロ
フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団&合唱団
合唱指揮: アドルフォ・ファンファーニ
パープシーコード: ウンベルト・ヴェドヴェルリ
指揮: シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ
録音: 1963年
(65:09/64:25)
今夜はロッシーニの「アルジェのイタリア女」です。
先週に引き続き同じオペラを聞くことになりましたが、今夜は全曲盤を選びました。ベルガンサ、アルヴァ、コレナ、パネライを擁したヴァルヴィーゾ盤です。
ベルガンサのイザベッラは上品であり、男たちを次々にいなす豪快さは感じにくいのですが、愛らしさがあるためもてる理由がよく分かります(≧∇≦)
コレナもパネライも堂にいった歌いぶりで、魅力たっぷりです。このふたりは「ラ・ボエーム」でも重宝された歌手と思いますが、私の知る限り、録音での共演はありません(パネライはマルチェロ、コレナはショナール、ベノア、アルチンドロ)。
往年の名歌手たちをこうした共演で聞くことができることは幸いです。ヴァルヴィーゾの指揮も堂々としていながら愉しみに満ちています。全体的にはじけるようなリズム感よりも、旋律美に焦点が合わさった演奏と言えるでしょうか。
2009/Apr
28
Tuesday
22:00
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ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「セビリャの理髪師」ハイライツ
ロジーナ: マリリン・ホーン
フィガロ: レオ・ヌッチ
バジリオ: サミュエル・ラメイ
バルトロ: エンツォ・ダーラ
アルマヴィーヴァ: パオロ・バルバチーニ
ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
指揮: リッカルド・シャイー
録音: 1982年
(74:18)
今夜はロッシーニの「セビリャの理髪師」です。
前回鑑賞した「アルジェのイタリア女」から3年後の1816年、ロッシーニのオペラでも最も有名な「セビリャの理髪師」が発表されました。
「アルジェのイタリア女」といい、「セビリャの理髪師」といい、賢い女性(メゾ・ソプラノ)が悪巧みをめぐらす男性の裏をかいてハッピー・エンドという型がありますね。今回もその賢い女性、ロジーナにホーンを起用したシャイー盤を聞きました。
ここでもホーン特有の声質に癖を感じますが、やはりこの稀代のメゾ・ソプラノの歌唱にはただ感服するのみです。その相方のフィガロにヌッチ、バジリオにラメイ、バルトロはダーラと豪華な歌手陣の協演に聞き応え充分でした。
シャイーは、この指揮者にしてはタッチが重い感もあります。立派過ぎるとでも言えばよいでしょうか。しかし、有名な序曲などは堂々として好きです。
ロッシーニのオーケストレイションにかんして言えば、「セビリャの理髪師」といい「アルジェのイタリア女」といいオーボエの扱いが巧いですね!
2009/Apr
26
Sunday
00:00
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ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「アルジェのイタリア女」ハイライツ
太守ムスターファ: サミュエル・ラメイ
エルヴィーラ: キャスリーン・バトル
ズールマ: クララ・フォティ
海賊ハリー: ニコラ・ザッカリア
リンドーロ: エルネスト・パラシオ
イザベッラ: マリリーン・ホーン
タッデオ: ドメニコ・トリマルキ
プラハ・フィルハーモニック合唱団
イ・ソリスティ・ヴェネッティ
指揮: クラウディオ・シモーネ
録音: 1980年
(72:50)
今夜はロッシーニの「アルジェのイタリア女」です。
ベートーヴェンやショパンといった大作曲家から称賛されたロッシーニが再評価されたのは、今からわずか40年ほど前に過ぎないそうです。
生前は時代の寵児とでも言うべきほど人気がありながら、死後しばらく忘れられた存在となったのは、ロッシーニが"時代"に即しすぎていたのかもしれません。
オペラの録音となると、確かに「セビリアの理髪師」を例外とすれば、古い録音があまり無いかもしれません。ロッシーニは37歳で「ウィリアム・テル」を発表すると、それ以降はオペラを作曲することはなく年金生活に入り、美食家としてレストラン経営などしていたことは有名でしょう。
「アルジェのイタリア女」は愉快なストーリーに、歌手の技巧が炸裂するきわめて効果的なシーンに溢れています。その筆頭に挙げられるのは、第1幕フィナーレの7重唱でしょう。これが所謂"ロッシーニ・クレシェンド"というのでしょうね。
ホーンは癖はあるものの、この歌いっぷりには脱帽です。ラメイのムスターファもすばらしいですね。このコミカルなオペラを充分に堪能することができました。
なお、「アルジェのイタリア女」はロッシーニ21歳の1813年に作曲されていますが、これはワーグナーとヴェルディが生まれた年でもあります。そして、ロッシーニが亡くなった1868年(明治元年)は「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が初演された年でもありました。
2009/Apr
23
Thursday
00:00
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